
「DESTINY/松任谷由実」の歌詞を「独りよがり」に解釈してみた
「DESTINY」(作詞・作曲:松任谷由実)の歌詞がなにかおかしい。
この曲の歌詞の行間や時代背景を解釈していくと、「片思いを拗(こじ)らせた女性がつきまといまがいのことをしていた」という解釈に行きつきました。
この曲の歌詞は俯瞰(ふかん)または主人公の女性視点のみだけで語られており、男性視点での語りが一切ないことに違和感があります。
この曲に登場する主人公の女性、相手の男性、とても印象的な「安いサンダル」という単語、曲が書かれたときの時代背景、そもそもどうしてこんな解釈にいきついたのかなど、一味違う解釈を楽しみましょう。
曲の概要と一般的な解釈
この曲の概要と、歌詞の一般的な解釈を紹介します。
曲中の登場人物
この曲に登場する人物は次の通りです。
主人公の女性
この曲に登場する男性に恋する女性が、この曲の主人公です。
以降、「女性」と記載したときは主人公の女性を指します。
相手の男性
女性が思いを寄せる、相手の男性です。
以降、「男性」や「男」と記載したときはこの男性を指します。
この曲の歌詞の一般的な解釈
この曲の歌詞を深く考えることなく解釈すると、次のような内容に落ち着きそうです。
主人公の女性が、付き合っていた男性から振られた。
振った男性にもう一度振り向いてもらいたい、この気持ちをもう一度伝えたい、知ってもらいたい、そんな気持ちが女性を突き動かす。
着飾ることで自分を磨き、いつか会うかもしれないその男を見返してやる。
時は経ち、ついにその男に遭遇。
その男性はきれいに磨き上げた車で彼女のところに向かうのだろうか?
以前よりも遊んでいるようにも見える・・・。
そんな再会を果たした彼女だが、そのときに限って安いサンダルを履いているなんて・・・。
女性は男性を見返すこともできず、結局は結ばれない運命だったんだ、そう女性は悟った。
私もそんな風に思っていましたし、インターネット上で検索してもほとんど上記のような解釈です。
私が考えた歌詞の解釈
この曲の歌詞は最後のほうから読みつつ行間を補うことで、一般的な解釈とは違うものになります。
以降の内容はあくまで個人の考え方であり、この曲そのもの、世間一般の女性、世間一般の男性を貶める観点では書いていないことをご理解ください。
こんな読み解き方をする人間もいるんだな、程度でお読みください。
この曲の歌詞はどんな結論を持っているのか?(私の解釈)
女性の片思いが強くなって暴走したうえ、つきまといのような行動に走ります。
あるとき片思いが実らなかったことをずっと根に持っていた相手、例の男性が目の前に現れます。
男性を(勝手な思い込みで)見返すために着飾っていたはずが、今日に限って「安いサンダル」を履いていた・・・。
着飾った状態で男性と再会を果たすことができなかった事実は、女性に「結ばれることはない」と悟らせるには十分でした。
男性に対する女性の行動はすべて一方的なものであり、勝手に見返す対象とした挙句、ほんのわずかな油断をしたために「結ばれることはない」と考えるに至っています。
メタ的な解釈も含みますが、歌詞の内容は一貫して女性側の視点のみで書かれていること、男性側の視点による行動や言動が書かれていないことから、そもそも友人レベルですら面識があったかも怪しいです。
歌詞を読み解いてみる
上でも書いた通り、この曲は歌詞を後ろ側から読み解くといろいろわかるので、この記事でもそれに倣って書いています。
登場人物については、上で書いた内容と相違ありません。
この曲は女性側の視点のみで書かれている
この曲の歌詞はGoogle検索からご確認ください(歌詞のGoogle検索結果)。
歌詞をよく見ると、すべての内容が俯瞰や女性側の視点でしか書かれていません。
ありがちな解釈に出てきそうな「女性と男性が付き合っていた」という表現は無く、それどころか二人の面識があったどうかも具体的には書かれていません。
ユーミンの曲には女性側の視点でのみ書かれている曲もありますが、具体的に相手がどうしている、相手がどうなる、といったことが書かれているものが多い印象です。(例:ルージュの伝言)
いったいなぜ女性側視点だけなのか?
主人公の女性と相手の男性の関係はいったいどういうもの?
この女性はいったいどんな人物?
このあたりを中心に、さらに読み進めます。
「安いサンダル」の違和感と正体
この歌詞に登場する「安いサンダル」、歌詞の中に登場する相当なインパクトがある単語です。
どうしてなの 今日に限って
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安いサンダルをはいてた
この曲の解釈を考えるきっかけになった、とてもひっかかるワード「安いサンダル」を履いているだけで、どうして「今日に限って」と言ってしまうのか、とても違和感があります。
どんなサンダルを履いていたら「後悔するレベル」なのか、考えていきます。
安いサンダルを考えてみる
この「安いサンダル」っていったいどんなものなんでしょう?
今の時代でいえば、少し安いスポーツサンダル、クロックスのような合成樹脂でできたサンダルでしょうか?
では、この曲がリリースされた当時の1979年はどうでしょうか?
曲のリリースはバブルが始まる前の高度経済成長の時代。
そんな時代の「安いサンダル」は、いわゆる便所サンダル(今でも居酒屋だとおいてあるところがありますね)やつっかけのようなものを、私は想像しました。
対する「安くないふつうのサンダル」
「安いサンダル」に対するものとして、「ふつうのサンダル」について考えてみます。
当時の女性事務職の方は、制服着用が多かったと想像しています。
制服に合わせるサンダル、すなわち仕事用に履くサンダルは「安くはないけど高くもない」ものとなるでしょう。そんなサンダルを仮に外で履いていたとしても「しまった!安いサンダル履いてた!」と慌てるような代物ではないと想像します。
そんな「ふつうのサンダル」、一般的な男性は「このサンダルは高いのか?安いのか?」を、ぱっと見で判断はできない可能性があります。
導き出される「安いサンダル」の正体
以上のことから、後悔するレベルの「安いサンダル」は、便所サンダルやつっかけレベルのサンダルだったと考えています。
「つっかけ」ならオシャレなものもありそうな気はしますが、制服に合わせられるレベルと比較して「安い」ならば、それはやはり便所サンダルレベルでしょう。
2番の歌詞に登場する男性との再会はどんな場所?
安いサンダルを履いた女性、いったいどこへ出かけていたかを考えてみます。
まず、安いサンダルの前に登場する歌詞です。
それから どこへ行くにも
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着飾ってたのに
強い信念を持っており、外出するときは服装に気遣っていたにもかかわらず、このときだけは相当な油断をしていたようです。
便所サンダルやつっかけを履いて向かう場所、東京でいえば銀座や渋谷、原宿ではないということは簡単に想像できます。
ただしそれらの近所に住んでいたら「実はお金持ち?」という要素が入り、別の解釈に進んでいきそうです。ここではそれらの近所ではない、という前提で進めます。
便所サンダルで行く先といえば、現代でいえばコンビニ、近所や駅前のスーパーといったところです。時代背景を考えると、近所に1件だけぽつんとある商店、せいぜい自転車で駅前のスーパーでしょう。
続いて、着飾ってたのにと嘆く少し前に登場する歌詞です。
緑のクウペが停まる 雲を映し
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Sure love, my true love
昔より遊んでるみたい
この部分の歌詞で、お出かけ(お買い物?)の最中に意中の男性が運転する車を見かけた、ということがわかります。
この「見かけた場所」がどこかというと、私が想像するに、これは自宅の近所なのではと考えます。
後述しますが、この2人の住まいはそう遠くない、なんなら最寄駅は同じレベルのご近所さんの可能性が高く、昔から住まいも変わってないと考えられます(ここでいう「昔」は1番と2番の時間経過を指します)。
過去に「ホコリだらけの車」に近づけたこと、時間経過後に男性を見かけることができたことから、今も昔もご近所さんでしょう。
もしご近所さんでないならば、男性の車に近づいたり、男性と再会できそうな場所をウロウロしたり、そんな場所をどのように調べたのか非常に気になるところです。
怖いのでご近所さんということにさせてください。
さて、主人公の女性はお出かけするとき、たとえ近所でも意識的に着飾っていたはずです。しかし再会したときに履いてたのは「安いサンダル」。
自宅近所を出歩くときであっても着飾っていましたが、時間が経つとともに油断する回数も増えていったのでしょう。
1番の歌詞の「冷たくされて」は何のこと?
2番にも同じくだりが登場しますが、ここでは1番の「冷たくされて」を考えてみます。
冷たくされて いつかは
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みかえすつもりだった
この歌詞、文面だけ見ると「彼に振られて、見返してやるんだ」と読み取れます。
では、どんな振られ方をしたんでしょうか?
曲をなんとなく聞き流していると「付き合っていた彼に振られた」と読み取れますが、この曲の歌詞からは「二人が付き合っていた」ということが読み取れません。
たとえば「リフレインが叫んでる」の歌詞では、ペアになっていた男女双方の視点から語られています。
(1番の歌詞を抜粋)
どうして どうして僕たちは
出逢ってしまったのだろう(2番の歌詞を抜粋)
Google検索(検索語:松任谷由実 リフレインが叫んでる 歌詞)
どうして どうして私たち
離れてしまったのだろう
しかし「DESTINY」については、主人公の女性視点のみの語り口調となっており、男性に関することは俯瞰でしかありません。
したがって、1番の歌詞に登場する「冷たくされて」は、どうして女性は「冷たくされた」と感じたのかを考察すると、
- 告白をしたけど、男性にあっさり断られた
- 猛アピールしたけど完全スルーされた
- 男性側から見たら気づかれないようなアピールっぽいことをしたけど、やっぱり気づかれなかった
といった理由が考えられます。
本当にこれだけです。でも、理由としては十分だと考えます。
「付き合っていた人に振られたから冷たくされたと感じた」ではなく、「見向きもされなかったから冷たくされたと感じた」と読み解きます。
女性と男性は付き合っていなかった、告白した、またはアピールしていたけど見向きもされなかった、と考察しました。
どんな人にも心を許さなかったのか?
どうやら一人で盛り上がっていた女性は、男性に冷たくされたと思わされた後からは、他人に心を許すことはなかったようです。
男性だけに限らず、女性にすら許すことはなかったと思います。
それからどんな人にも 心をゆるせず
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「どんな人にも」って言ってますからね。誰からの話にも、耳を傾けない状態に陥ったかもしれません。
そしてその日、決意表明をしました。
今日わかった
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また会う日が生きがいの
悲しいDESTINY
※DESTINY:ここでは「運命」と訳すと解釈しやすいです
他人の話には耳を傾けることも無く、また会う日を生きがいとして、一人で突っ走り始めました。
誰か止めてあげて。
2番の歌詞の「冷たくされて」は何のこと?
1番と同じくだりですが、2番の歌詞の中では、見返すためにいつも実行していたことが説明されています。
冷たくされて
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いつかは みかえすつもりだった
それからどこへ行くにも
着飾ってたのに
2番の歌詞のこの部分、1番の歌詞ほど深く考えなくてよさそうです。
見返すために、外出するときはいつも着飾ってました。いつどこで、見返したい対象の男性と再会してもいいように。
まぁ、再会したときは便所サンダル履いてたんですけどね。
男性が車に書かれたメッセージを気に留めなかったことからわかること
1番の歌詞で、女性が埃だらけの車に指で書いたと思われるメッセージ、男性は気にも留めていない様子が描かれています。
あなたは気にもとめずに走り出した
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True love, my true love
誰かが待ってたから
なぜ気に留めなかったのか?
それは「気に留める理由がなかったから」にほかなりません。
おそらく男性は「気づいたけどイタズラだと思った」か「まったく気づかなかった」のどちらかです。
女性と面識がないならば「ただのイタズラ」と思い、面識がある女性が書いたと分かったならば、怖くて仕方なかったことでしょう。
仮に、もし主人公の女性と付き合っている状態で別の彼女に会いに行く状態だったならば、そんな文字は速攻で消すことでしょう。しかしそうしなかったのは、上記の理由によるものと考えられます。
これを前提に、いくつかの疑問点を掘り下げてみようと思います。
「誰か」は誰なのか?
そもそも「誰か」は誰なのでしょう?
歌詞をそのまま読むと、確かに「誰かが待ってたから気にも留めなかった」、つまりこの男性には懇意にしている女性がいたと想像できますが、歌詞の内容だけでは確定情報には至りません。
これらが想像でしかないということは、男性が車に乗った理由もまったく確定できません。友人に会いに行ったのかもしれませんし、買い物に行ったのかもしれません。
しかしここでは「誰か」が誰であるかは問題ではなく、女性が「男性が懇意にしている女性に会いに行ったと勝手に解釈した」ということがポイントになります。
女性と男性の面識のレベル
女性と男性は、どれくらい面識があったのでしょうか?
私の考察は「まったく面識がない」です。
いやいやそんな訳ないでしょう?と思うかもしれませんが、面識があるとはどうしても思えません。
では、面識がどの程度あるのかを考えてみます。
「二人が付き合っていた」レベルは、まず却下します。上で書いている「冷たくされた」ときの状況と整合性が取れません。
「友達程度の面識」はあるでしょう?とも思えますが、これもかなり可能性が低いです。
この曲の歌詞には、二人が会話している、直接会っている描写が一切ありません。したがって、友達程度の面識も却下です。
残るのは「薄い面識」「面識がない」となりますが、歌詞や行間からは判断できませんでした。
薄い面識は、(良くて)ご近所さんで挨拶する程度、そして面識なしは、ご近所で見かける、朝の駅のホームで見かける程度です。
歌詞の中で二人が一緒に話している、行動しているという描写がない以上、面識がない(または薄い)と解釈できます。
ホコリだらけの車とは言え、人の車に「love」とか書いてある状況
1番の歌詞で、女性が埃だらけの車に指でメッセージを書いている描写があります。
ホコリだらけの車に 指で書いた
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True love, my true love
本当に愛していたんだと
ここまでの解釈をもとに、どのような人物がどのような状況でメッセージを書いたのでしょうか?
「面識のない男性の車に」「近所に住んでいる女性が近づき」「愛しているに近いメッセージを残した」。
・・・・、うん。
このメッセージはかなり強い愛を感じます。一方的な・・・。
もし男性がこのメッセージに気づいていたら、いったいどんな気持ちだったんでしょう?
むしろ気づかなかった方が精神衛生上よかった、という考えもできます。
薄い面識だけでも、まだあった方がいいかもしれませんが、面識がない人が書いているとしたら、それはそれは。
おぉ、怖い・・・。
クウペに乗って窓開けて口笛吹いてたら遊んでるように見えるの?
さて、便所サンダルを履いて出かけた女性は、因縁と思い込んでいる男性と再会を果たします。
緑のクウペが停まる 雲を映し
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Sure love, my true love
昔より遊んでるみたい
再び2番の出だしの考察です。
1番の最後からどれだけ時間が経過しているかわかりませんが、男性は車を買い替えたか、めちゃくちゃきれいにしたようです。
1番で「ホコリだらけの車」と言ってますが、このときは車種がわからなかっただけかもしれません。
そんな車をきれいに磨き上げたか買い替えた表現として、2番では「クウペ」とわざわざ名指ししているんだと思いました。
みがいた窓をおろして 口笛吹く
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Sure love, my true love
傷あとも知らないで
何をもって「昔より遊んでるみたい」と判断したんでしょうか?
みがいた窓?
口笛?
ここでは描写されていない服装や装飾品?
それとも、ピカピカの車?
ピカピカの車で、ご機嫌な感じでドライブしていたのかもしれません。まぶしいからサングラスをかけて。
男性が車で何をしに行くかは特に触れられていませんが、友人に会いに行ったり、彼女に会いに行ったり、一人でドライブに行ったり、理由はいくらでもあります。
女性がこのときどういった想像したかの描写はありませんが、1番の歌詞の内容を考慮すると「この男性はこれから彼女に会いに行くんだ」と考えたのかもしれません。
以前と同じような服装をしていても、ピカピカの車に乗っているだけで行動が派手に見えます。
女性はその光景を見て「昔より遊んでる」と考えたのかもしれませんが、実際には以前と変わっていない可能性があります。
時代背景を考えると、車を所有することがステータスであったことも考えられるため、周囲の人たちから注目を浴びたいがために買い替えたと思った、ゆえに「遊ぶために買い替えた」と捉えたようにも見えます。
いわれなき「チャラ男」認定をされているように思えました。
振り向いてもらえなかった相手を強く思うあまり、女性の個人的な感情は「遊んでいる」ように見えたと考えられます。
結局この歌詞を解釈した結論は?
女性が、面識のない男性の車に近づいてメッセージを書いたり、勝手に見返して見せると意気込んだり、結果として一人で盛り上がってるな~、というお話。
安いサンダルは便所サンダルでした、たぶん。
と言うか、面識ない人の車に勝手にメッセージ書くのはいかがなものでしょう?
解釈によってはストーカー的な話にも見えてきますが、そうであってほしくないので「面識なし」の人が強い片思いをした曲、という解釈をすることにしました。
勝手に変な解釈をしてすみませんでした(後記)
私の解釈は以上になります。
悪意はないんです。
しかし曲の歌詞にある違和感をすべて読み解くと、このような解釈になってしまいました。
そんな解釈をしていたら、西○カナの「トリ○ツ」の歌詞なんか「ただのかまちょでかわいいもんだ」なんて思ってしまいました。
「DESTINY」のいいところは、「誰の立場で見るかによって、解釈が変わる」というところで、楽しみ方も人それぞれなんだな、と思っています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。