「安いサンダル」が教えてくれる「DESTINY」の真実――松任谷由実の名曲を徹底分析

2024年4月12日 08:41

「DESTINY」(作詞・作曲:松任谷由実)の歌詞がなにかおかしい。

この曲の歌詞の行間を補って読み解いた結果、片思いを拗(こじ)らせた女性がつきまといまがいのことをしていた、という解釈になりました。

解釈のポイントは、この曲の歌詞は主人公の女性の視点、または俯瞰だけです。歌詞に登場する男性の視点から書かれた内容は一切ありません。

この記事では、歌詞に登場する主人公の女性、相手の男性、そしてとても印象的な「安いサンダル」という単語、曲が書かれたときの時代背景をもとに考えた解釈を紹介します。

歌詞に登場する主人公の女性は、以降「女性」と表記します。
同様に、歌詞内に登場する男性は「男性」と表記します。

前提によって「振られた」「追いかけた」と解釈が変わる

この曲の解釈は、女性と男性がどのような関係だったか、という前提をどのように設定するかで、解釈が全く違うものになります。

女性が男性と付き合っていた、とするならば「男性は女性と遊びで付き合ったあげく、まったく違う女性に乗り換えた」となります。

女性が男性と付き合っていない(または面識が無い)、とするならば「女性は付き合ってもない男性に、半ばストーカーのような行為をしていた」となります。

女性と男性が付き合っていた前提だと三角関係にまで想像が膨らむ

もし女性と男性が付き合っていた、と仮定すると、女性は男性と付き合っているのに男性は別の女性を抱えていたことになります。

俗にいう「三角関係」というやつです。

この観点で歌詞を見ていくと、登場人物はすべてドロッドロの状態を渡り歩いています。

ただし、歌詞の中には明確に振られた表現や、男性に別の女性がいるという表現がありません。

したがって、この解釈は違うのではないか?というのが私の考えです。

女性と男性が付き合っていない前提だと付きまといを疑う

もし女性と男性が付き合っていなかった、と仮定すると、女性と男性は面識が無い、面識が限りなく薄い関係だと解釈できます(ここでは「面識なし」で話を進めます)。

女性と男性の面識がないのであれば、女性が陰でこっそり男性を見ていたり、こっそり車に近づいたり(なんなら落書きしたり)、それはまるで付きまといのように見えます。

面識が無い人にがんばって振り向いてもらえるように努力しているようですが、努力の方向性が違いませんか?とツッコミを入れたくなります。

一人で盛り上がって、あるとき男性を見かけたときに安いサンダルを履いていたことを後悔した、とても独りよがりな印象しか受けませんでした。

女性視点のみの歌詞が「付きまとっているのでは?」と思わせた

この曲の歌詞は女性視点からのみ、および俯瞰で書かれているため、女性と男性と付き合っていなかった可能性が高いと考えます。ゆえに付きまといのように見えてしまいました・・・。

歌詞には「女性と男性が付き合っていた」という表現は一切ありませし、「二人の面識があった」ということについても、実は具体的に触れてはいません。

ユーミンのほかの曲には女性側の視点でのみ書かれた曲もありますが、具体的に「相手がどうしている」、「相手がどうなる」といった具体的な内容を書いている曲が多い印象です。(例:ルージュの伝言

いったいなぜ女性側視点だけなのか?
女性と男性の関係は、本当はどういうもの?
この女性はいったいどんな人物?

このあたりを中心に、さらに読み進めます。

「安いサンダル」の正体はつっかけとか便所サンダル的な履き物

この曲に登場する「安いサンダル」は、この曲の意味を考えるきっかけになったワードです。

ここでの「安いサンダル」は、つっかけとか便所サンダル、現代で言えばクロックスのようなものです。

「安いサンダル」というワードが強烈すぎて、どういう履き物か想像しづらいですね。

どうしてなの 今日に限って
安いサンダルをはいてた

Google検索(検索語:松任谷由実 destiny 歌詞

「どうしてなの」と後悔するレベルの「安いサンダル」は、通勤用や職場で履きつぶすような履物ではないと想像できます。

「つっかけ」ならオシャレなものもありそうな気はします。しかし「職場の服装に合わせられるレベル」と比較して「安い」ならば、それはやはり便所サンダルレベルでしょう。

以上のことから、この記事では「安いサンダル」は便所サンダル、と結論付けています。

2番の歌詞で男性と再会した場所は便サンで行けるような女性の住まいの近所

2番の歌詞の最後で男性を見かけますが、便所サンダルででかけられるような場所なので、女性が住んでいる場所の近所となります。

それから どこへ行くにも
着飾ってたのに

Google検索(検索語:松任谷由実 destiny 歌詞

安いサンダル、この記事では便所サンダルですが、便所サンダルを履いて出かけるような場所は、自宅の近所くらいです。

決して銀座や渋谷、原宿のような場所ではない、ということが簡単に想像できます。

そんな気楽な格好ででかける近所といえば、駅前のスーパー、現代で言えば自宅近くのコンビニといったところでしょう。

これを裏付けるのが2番冒頭の歌詞です。

緑のクウペが停まる 雲を映し
Sure love, my true love
昔より遊んでるみたい

Google検索(検索語:松任谷由実 destiny 歌詞

この車をどこで見かけたのか、という問いの答えは女性宅の近所、男性宅の近所、女性や男性の職場近くなどなど・・・。

「便所サンダルで近所に出ていた」ということから、職場近くや近所以外の出先で見かけた選択肢はありません。また、女性と男性の自宅が離れた場所にある、という選択肢も消します。

女性と男性の自宅が近所ならば、男性や男性の車を見かける可能性が非常に高いです。

以上のことから、女性と男性の自宅はそれなりに近い場所であること、車を見かけた場所が女性や男性の自宅の近くであると結論づけます。

自宅近所を出歩くときであっても着飾っていましたが、時間が経つとともに油断する回数も増えていったのでしょう。

1番の「冷たくされて」を読み解くと付き合っていなかった可能性が見えてくる

2番にも同じくだりが登場しますが、ここでは1番の「冷たくされて」を考えてみます。

ここで「冷たくされて」を読み解くことで「男女は実は付き合っていなかったのでは?」という解釈が見えてきます。

冷たくされて いつかは
みかえすつもりだった

Google検索(検索語:松任谷由実 destiny 歌詞

この歌詞、文面だけ見ると「彼に振られて、見返してやるんだ」と読み取れます。

では、どんな振られ方をしたんでしょうか?

「付き合っていた彼に振られた」と読み取れますが、この曲の歌詞からは「二人が付き合っていた」ということが読み取れません。

たとえば「リフレインが叫んでる」の歌詞では、ペアになっていた男女双方の視点から語られています。

(1番の歌詞を抜粋)
どうして どうして僕たちは
出逢ってしまったのだろう

(2番の歌詞を抜粋)
どうして どうして私たち
離れてしまったのだろう

Google検索(検索語:松任谷由実 リフレインが叫んでる 歌詞

しかし「DESTINY」については、主人公の女性視点のみでの語り口調です。

このことから「冷たくされた」の内容は

  • 告白をしたけど、男性にあっさり断られた
  • 猛アピールしたけど完全スルーされた
  • 男性側から見たら気づかれないようなアピールっぽいことをしたけど、やっぱり気づかれなかった

といった考察になります。

「付き合っていた人に振られたから冷たくされたと感じた」ではなく、「見向きもされなかったから冷たくされたと感じた」と読み解きました。

女性と男性は付き合っていなかった、告白した、またはアピールしていたけど見向きもされなかった、と結論づけます。

2番の「冷たくされて」はここまでの話の流れを補足している

1番と同じ言い回しですが、2番の歌詞で「冷たくされて」は、見返すためにいつも実行していたことを補足する内容です。

冷たくされて
いつかは みかえすつもりだった
それからどこへ行くにも
着飾ってたのに

Google検索(検索語:松任谷由実 destiny 歌詞

見返すために、外出するときはいつも着飾ってました。いつどこで、見返したい対象の男性と再会してもいいように。

まぁ、再会したときは便所サンダル履いてたんですけどね。

2番の歌詞のこの部分、1番の歌詞ほど深く考えなくてよさそうです。

車に書かれたメッセージを気に留めなかったのは面識がなかったまたは薄かったから

埃だらけの車に指で書いたと思われるメッセージ、男性は気にも留めていない様子が描かれていますが、女性と男性の面識がなかったから、または面識が薄かったからと考えます。

あなたは気にもとめずに走り出した
True love, my true love
誰かが待ってたから

Google検索(検索語:松任谷由実 destiny 歌詞

おそらく男性は「気づいていたけどイタズラだと思った」か「そもそも書かれていたことに気づかなかった」のどちらかです。

もし「面識がある女性が書いた」ということを認識していたとしたら、怖くて仕方なかったことでしょう。

この文字を消した様子がないので、そもそも気づいていなかったんだろうな~・・・。

これを前提に、疑問点を掘り下げてみようと思います。

「誰かが待ってたから」の「誰か」は誰だか特定されない誰か

「誰かが待ってたから」の「誰か」は誰なのでしょう?

歌詞をそのまま読むと「誰かが待ってたから気にも留めなかった」、つまりこの男性には懇意にしている女性がいたと想像できますが、「誰かが待ってたから」はあくまで女性の想像となります。

また、男性が車に乗ってでかけた理由も特定できません。友人に会いに行ったのかもしれませんし、買い物に行ったのかもしれません。

しかしここでは「誰か」が誰であるかは問題ではなく、女性が「男性が懇意にしている女性に会いに行ったと勝手に解釈した」という解釈にたどり着きます。

女性と男性の面識有無は「面識が無い」か「面識がかなり薄い」レベル

女性と男性の面識度合いは「面識なし」か「面識はかなり薄い」と考えられます。

では実際、どれくらい面識があったかを深堀りします。

「二人が付き合っていた」レベルの面識は、まず却下します。

これは、上で書いている「冷たくされた」ときの状況と整合性が取れなくなるためです。

つぎに「友達程度の面識」レベルの面識についてですが、これもかなり可能性が低いです。

この曲の歌詞には、二人が会話している様子や直接会っている描写が一切ないため、友達程度の面識も却下です。

最後に残った「面識が無い」「面識がかなり薄い」ですが、どちらかを特定するような描写は歌詞や行間からは判断できませんでした。

薄い面識は「(良くて)ご近所さんで挨拶する程度」、面識なしは「ご近所で見かける」または「朝の駅のホームで見かける」、そんな程度の面識です。

歌詞の中には二人が一緒に話している様子や一緒に行動しているという描写がないため、面識がない、または面識がかなり薄いと結論付けました。

ホコリだらけの車に「love」とか書ける状況はやっぱりご近所さん

1番の歌詞で、女性が埃だらけの車に指でメッセージを書いている描写がありますが、これはやっぱりご近所さんなのではと考えています。

ホコリだらけの車に 指で書いた
True love, my true love
本当に愛していたんだと

Google検索(検索語:松任谷由実 destiny 歌詞

書かれたメッセージは、かなり強い愛を感じます。一方的な・・・。

これまでの解釈により、男性このメッセージに気づいていない可能性が高いですが、もし気づいていたらいったいどんな気持ちだったんでしょう。

面識のない誰かに付け狙われているんじゃないかと、気が気でないかもしれません。

クウペに乗って窓開けて口笛吹いているからって遊んでるわけではない

さて、便所サンダルを履いて出かけた女性は、因縁と思い込んでいる男性と再会を果たします。

緑のクウペが停まる 雲を映し
Sure love, my true love
昔より遊んでるみたい

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1番の歌詞の最後からどれだけ時間が経過しているかわかりませんが、ピカピカな状態で使っているようです。

1番で「ホコリだらけの車」と言ってますが、これがクウペの可能性だってあります。

車をきれいに磨き上げたか買い替えた表現として、2番ではあえて「クウペ」と具体的に表現しているんだと思います。

みがいた窓をおろして 口笛吹く
Sure love, my true love
傷あとも知らないで

Google検索(検索語:松任谷由実 destiny 歌詞

ところで「昔より遊んでるみたい」と判断したんでしょうか?

みがいた窓?
口笛?
ここでは描写されていない服装や装飾品?
それとも、ピカピカの車?

ピカピカの車で、ご機嫌な感じでドライブしていたのかもしれません。まぶしいからサングラスをかけて。

女性がこのときどういった想像したかはわかりませんが、1番の歌詞の内容を考慮すると「この男性はこれから彼女に会いに行くんだ」と想像したのでしょう。

男性は買い物に行ったのかもしれませんし、友人に会いに行っただけかもしれませんが、歌詞からはわかりませんでした。

時代背景を考えると、車を所有することがステータスだったことでしょう。そして女性はピカピカの車を見て「遊ぶために買い替えた」と捉えたようにも見えます。

いわれなき「チャラ男」認定です。

振り向いてもらえなかった相手を強く思うあまり、女性の個人的な感情は「私には振り向くこともなく他の女性と遊んでいる」と想像したのでしょう。

女性は男性と付き合ってないし、そもそも面識なんか無かったと思う

女性が、面識のない男性の車に近づいてメッセージを書いたり、勝手に見返して見せると意気込んだり、結果として一人で盛り上がってるな~、というお話。

女性と男性は付き合ってなんかないし、そもそも面識なんて無い、または薄いという解釈です。

最後に出てくるパワーワード「安いサンダル」は便所サンダルです。

と言うか、面識ない人の車に勝手にメッセージを残すのはいかがなものでしょう。

解釈によってはストーカー的な話にも見えてきますが、そうであってほしくないので「面識なし」の人が強い片思いをした曲、という解釈で結論としたいと思います。

しかし、最後の最後でその宿命を受け入れて先に進もうとする主人公を、私はぜひ応援したいです!

勝手に変な解釈をしてすみませんでした(後記)

私の解釈は以上になります。

悪意はないんです。

しかし曲の歌詞にある違和感をすべて読み解くと、このような解釈になってしまいました。

そんな解釈をしていたら、西○カナの「トリ○ツ」の歌詞なんか「ただのかまちょでかわいいもんだ」なんて思ってしまいました。

「DESTINY」のいいところは、「誰の立場で見るかによって、解釈が変わる」というところで、楽しみ方も人それぞれなんだな、と思っています。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。